スピーカー

  • 上海味の素調味料社 外食・加工事業部 市場総監 片山雄平 氏
  • サイボウズ株式会社 kintone プロダクトマネージャー 伊佐政隆

今回の主役は中国の現地幹部

片山雄平氏(以下、片山):ただいまご紹介にあずかりました、上海味の素調味料社の片山と申します。このたびは貴重な機会を賜り、ありがとうございます。

今日のポイントは、テーマにありますとおり、中国の現地幹部が主役でございます。そしてポイントは「育てる」。「る」ということでまだ変化は続いています。こちらの中身を説明してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

簡単にビフォー・アフターで説明してまいります。ビフォーからアフターの間に1人の白馬の王子様が現れまして、この業務改革を推進しております。こちらの流れをこれからスライドに沿って説明をしたいと思います。


まず味の素グループについて簡単にご説明いたします。かなりご存じの方が多いと思いますが、世界130ヶ国に展開しております食品企業でございます。

では、上海味の素調味料社とはどういう会社かということを説明してまいります。味の素グループは、ご存じの方も多いと思うんですが、食品とバイオサイエンス、そして医学・健康、非常に多くの事業をアミノ酸を軸に展開している企業でございます。

日報を書く時間がない、顧客情報をシェアしたくない

一方、上海味の素調味料社の事業はなにをやっているのか。ひと言でいうと、BtoBに特化しています。


かなり意外なイメージを持たれると思うんですが、こちらにある、たぶん街で見かけたことがあると思うんですけども、ちょっと鴨の甘辛いものを出してるお客様や1分以内で非常においしい朝ごはんが食べられるメニューを提供されているお客様。こちらが私どもの大事なお客様でございます。


その下にあるのが、お客様の工場でございます。もうほとんど自動車の工場じゃないかというぐらい大きな工場なんですが。

こちらで標準的においしいものを届けるということは品質管理上簡単ではないと言われます。そちらを、弊社の調味料を使うことで、辛くてコクのあるおいしい料理を安定的に出すなどのお手伝いをしております。


ただ、順風満帆ではございません。14年度からはいわゆるBtoBに業務を集中する事業の構造変革を実施しました。その時には多くの課題が存在しました。


例えば、みなさんご存じのとおり、中国はとにかくでかいです。そのため、情報の伝達にかなり時間がかかります。BtoBの外食チェーンの食品工場は市街地にはほとんどございません。開発工場区画という、だいたい車で1時間あるようなところにございます。

そこには、営業マンが1日1時間かけてお客様に行って、そしてまた帰ってくる。帰ってきて日報を書くということで、大変な時間がかかるロスがありました。


あともう1つ。非常に難しいなと思ったのは、営業会議を月に1回開くんですが、報告事項で「みんな一生懸命やっています」「値段が高いから売れません」などが伝えられる。物理的距離があるので本当にどのように働いているのかかよくわからない状況があります。


あとけっこう多いのが、自分のお客さんの情報をシェアしたくない。「これは私のお客さん」。ということで非常に困った状況が続いていました。

「信・点・深」をどうやって営業システムに落とし込むか

そこで立ち上がったのが、1人の白馬の王子です。日本でいうと暴れん坊将軍で、西洋でいうと童話の白馬の王子、中国では営業総監の宋広民さんが立ち上がりました。今日、実はこの会場にいらっしゃっております。

(会場拍手)

宋さんは入社20年目、北京出身、日本で1年間研修をしたんですが、好きなお酒は日本酒と二锅头という白酒です。見た目はちょっと怖い感じでバリバリの中国の営業部長なんですけれども。


実はこの方がBtoBの事業変換で「なんとかせねばならん」ということで、ご自身が日々学んで身に着けた「信・点・深」、この手法をどうやって営業システムに落とし込むか。当時、日本人のシステム開発担当部長に声をかけて、「いいシステムの会社さんございませんか?」ということで、初めてサイボウズ社さんのkintoneと出会った次第です。


そのタイミングで、14年8月、すべての営業マンにiPadを配布して、この取り組みを開始しました。


宋さんが始めたチームワークが非常に特徴的でございまして。最初にトップセールスとIT担当者、この3人で小さなチームを作りました。これを小さな実験から全体へということで、14年の7月に上海の販売、そしてその3ヶ月後に全国。そして2年かけて管理全体に広げていきました。

ここで2015年にサイボウズさんにお作りいただいたVTRがございますので、2分40秒ほどなんですが、ご覧いただければと思います。よろしくお願いいたします。


(動画が流れる)


ありがとうございます。こういったかたちでkintoneを導入しました。

移動中でも日報を書けるメリット

もともとは、別のシステムを使っておりました。今回kintoneを選んだ理由は、BtoBに合った見える化・効率化ができるということで、この仕組みを導入しております。

ここからは、ポイントを絞って説明していきます。先ほどのお話にもありましたとおり、图片、いわゆる写真が簡単にアップできるということで、工場での写真や競合の写真、このあたりが手軽にスピーディに全体でシェアできる。


そして、文字情報ですね。回訪記録を営業がインプットしますと、その情報が顧客情報のプロファイルとして日報のアプリケーションに自動的に配信されます。そのため、営業は1日の活動が終わったら日報がほぼできている。そういったところが時間短縮につながっています。


かつ、管理者にとってはそれを一発で表で見れてとれますので、毎月毎日の管理が、何件行ったか何件成功したかというところが手軽に見れるといったメリットがございます。


BtoBで一番よかったポイントは、いつでもどこでもということ。かなり移動距離がございますので、例えば左側、移動中のバスのような状況でも日報を送れます。そしてその隣は地下鉄の中で日報を打ってます。

ちょっと2人分座ってるので、これは若干問題ではあるんですけれども……。こういったかたちで、どこでも簡単にインプットできるというメリットがございます。

うまくいかなかった訪問先を仲間と共有

そしてこれから1つ事例を説明してまいりたいと思います。

宋さんが考えている営業の哲学で信・点・深。顧客の情報。そして点というのは小さな成功事例・プロセス。そしてそれを深める、広げる。これをいかに仕組みで実現するかということで、今回14年に発売しました「肉用調理料」という事例で説明します。


これは簡単にいうと、絵があるんですけど、この調味料を使うと肉が大きくなるというような素材を改良する調味料です。もしご興味がありましたら、後ほどお問い合わせください。


実際に肉を焼くと、だいたい70パーセントぐらいに縮んでしまいます。ただ、この調味料を使うと縮みが少ないのでいつまでもおいしく食べられる。


こちらをどのように導入しているかというところを、先ほどの信・点・深にしたがって説明します。


まず顧客の情報を営業がインプットします。今までは、やはり営業は自分のものにしたいからあまり情報を書きたくない。ただ、この情報を入れないと後ほどのMVP制度につながる成功事例が入りません。そのため、営業は必ずこれをインプットするようになりました。

そして営業は回訪先をこのように記録していきます。もう何十回と回訪を繰り返して。その結果、うまくいかなかったところを上司や開発部門からkintoneのシステムを通してみんなにアドバイスを送ってくれます。それをiPad上に瞬時にアップするということで、徐々に顧客との距離が近づき、成功しました。

成果の見える化が人材マネジメントにつながった

1つ、いいポイントとしましては、これ初回のオーダーから2回目、3回目ということで、リピートが見えるところです。


先ほどの1つの事例を全体へ広げる。深といいますよね。マーケティング部門で小さな事例を集めまして、これをみんなが使える提案ツールとして、毎月マガジンスタイルでiPadに配信をしてきました。これによって発売2年間で飛躍的拡売を実現している状況になっております。

もう1つのいいポイントは見える化です。中国語で借口という言葉はみなさんご存じだと思うんですが、いわゆる言い訳が見えるということです。みんな「一生懸命やってます」と言ってましたけれども、結果はどうかというとけっこう差があります。


(スライドを指して)赤いのは1店舗の外食店、緑がいわゆる外食チェーンですね。青色が食品加工工場です。

緑と青が多いとけっこうパフォーマンス出てますねというところなんですが、かなりばらつきがある。成果も同じような指標で見ることができます。


ここのテーブルの瀋陽が実は回転効率が非常にいいというところで、みんなで瀋陽の事例を学ぼうと、PDCAを回して売上を伸ばしてきている状況になります。


一番いいポイントは、人材マネジメントにつながりました。これによって成果が見える化しました。正しい評価ができるようになりました。


これによって半年に一度、優秀な営業担当者を高く評価することで、人材の育成にもつながっております。あとは営業管理以外にも内勤のいろんな生産ツールの開発。約18アプリケーションを開発している状況です。


最後に、持続的成長に向けて、これからサイボウズさんと取り組んでいくテーマですが、これまたみんな出したくない失注率でありまして。なんとかこれを出させることで、ここのPDCAを回していきたいと思っております。


これからさらなる発展をしていきたいと思っておりますので、サイボウズ社さん、ぜひ戦略パートナーとしてご支援賜りますようよろしくお願いいたします。それではみなさんご清聴ありがとうございました。

営業部以外のメンバーと成果を共有できる

伊佐政隆(以下、伊佐):ありがとうございました。すごくいい事例発表いただいたんですけど、営業マンの評価が正しく見える。これはすごく大事なことだと思うんですよ。


でも僕、今日お話しいただいたなかで一番すばらしいなと思ったのが、営業の方が訪問して訪問記録を入れたら、開発の方もアドバイスをしてくれる。その成功事例が出たらマーケティング部門の方がそれをすぐ月に1回の冊子にして、みんなが活用できるようになる。そして、すごくいいチームワークができていると思うんですよ。


でも、社内では営業の方がやっぱり評価されるという仕組みのなかで、どうやって周りの開発部門の協力とかを引き出せてきたのかというところに興味を持ったんですが。


片山:先ほどの画面でいうと、左側に「参加の空間」と書いてありました。やはり開発のメンバーとしても自分が開発した製品が売れるというのは、非常にうれしいんですよね。

使っている写真をアップすることで、感覚的にも楽しさとかうれしさがすごく伝わりやすくなった。文字だとわからない情報が入ることで、がんばって投稿したり成果を出す営業担当者を自然と応援しようとなります。


伊佐:ということは、営業の方にとってはMVPとして評価されたり表彰されたりが評価だけれども、開発のメンバーからしたら営業マンが「お客さんはこういうふうに使ってるんだよ」「こういうふうに喜んでるんだよ」と報告してもらうことが開発のメンバーにとっての評価になっていて、それがうまく回っている。そんな感じなんですかね?


片山:おっしゃるとおりですね。逆になかなか成果が出ない営業担当者にとってはかなりいいプレッシャーになる。


伊佐:なるほど(笑)。また助けてもらいにくい(笑)。


片山:先ほどの営業の宋さんからかなりプレッシャーをかけるというような。


伊佐:やはりちょっとコワモテでいらっしゃるので(笑)。


片山:(笑)。


伊佐:いやいや、すいません(笑)。なるほど。ありがとうございました。すばらしい事例発表をありがとうございまた。

(会場拍手)

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