コミュニケーション課題を乗り越えチームワークを高めるための実践的アプローチ

現場の活性化を生む心理的安全性研修


出光興産 株式会社

【業務内容】

今回研修の対象となった「徳山事業所」では、ナフサ、LPガスを原料に、エチレン、プロピレンなど、各種石油化学製品を生産

はじめに:あなたのチームは、本音で話せていますか?

「会議で発言するのは、同じメンバーに偏りがちだ」
「現場からの改善提案がなかなか出てこない」
「職場への不満があっても、誰も問題提起をしない」
「責任感の強い特定の人にばかり業務が偏り、チーム全体の士気が下がっている」
「世代間ギャップやパワハラを恐れて、若手の指導を難しく感じるベテランが増えた」

このような職場のコミュニケーションに関する悩みは、多くの企業が抱える共通の課題ではないでしょうか。
実はこれらの症状は、多くのチームが陥りがちな「悪循環(Bad Cycle)」のサインかもしれません。成果を求めるあまり、行動管理やプレッシャーを強め、結果としてチームの人間関係が悪化し、さらに成果が出にくくなるという負のスパイラルです。

今回ご紹介する出光興産株式会社 徳山事業所では、この悪循環を断ち切り、チームの力を最大限に引き出すための一歩として、サイボウズの「心理的安全性研修」を導入いただきました。

本記事では、出光興産徳山事業所が取り組んだ研修の具体的な内容と、その背景にある考え方を、研修コンサルタントの視点からご紹介します。

研修導入の背景:抱えていた「心理的安全性」という課題

出光興産徳山事業所では、一人ひとりの「やりがい」を高めるために、職場の心理的安全性を向上する必要性がある、という課題に直面されていました。

チームメンバー同士で話し合い、効果的な職場改善アクションプランを策定・実施するために、まずメンバーが本音で話し合える「土台」を整える準備段階として、サイボウズの「心理的安全性研修」が選ばれました。

特に研修の対象として重視されたのは、チームの中核を担う中間マネージャー・リーダー層です。彼らが心理的安全性の重要性を理解し、対話のスキルを身につけることが、チーム全体の変革に繋がると考えられたのです。

研修開始前に参加者から共有された「もやもや(職場での問題意識)」には、以下のような声がありました。

  • 特定の人の意見しか出ない、何かを決める時に意見が少ない
  • 責任感の強い人に業務が偏る
  • 若手社員とベテラン社員の間でのコミュニケーションの難しさ

これらの課題意識が、研修プログラムの出発点となりました。

研修の全体像:心理的安全性を3ステップで高めるサイボウズのプログラム

今回実施された研修は、単発の知識習得で終わるのではなく、体感と実践、そして振り返りを重視した全3回のプログラムで構成されています。

第1回:心理的安全な場を「体感」する
第2回:「理想」の共有・チームメンバーの声と向き合う「対話」を実践する
第3回:実践の振り返りから学びを定着させ、取り組みを促進する

この3ステップを通じて、参加者が心理的安全性を「知っている」状態から「実践できる」状態へと移行することを目指します。

サーベイイメージ図

※チームメンバーの声と向き合う「対話」のパートでは、サイボウズオリジナルのTeamwork Surveyを活用

【第1回】「わがまま」と「もやもや」の共有から始まる相互理解

研修の第一歩は、参加者自身が「心理的に安全な場」とはどのようなものかを実際に体感することから始まります。知識として学ぶだけでなく、ワークショップを通じて心と体で理解を深めていきます。

「わがままカード」で見つける、自分の大切な価値観

最初のワークは「わがままカード」です。ここで言う「わがまま」とは、利己的な振る舞いのことではありません。サイボウズでは「我がまま」、つまり「自分が大切にしたい本音の価値観」と捉えています。このワークショップの狙いは、ゲーム感覚で自己開示へのハードルを下げ、普段は言葉にしない個人の価値観を安全に共有する場を作ることです。この構造化されたプロセスがあるからこそ、参加者は安心して、自身の価値観を語り始めることができます。

「わがままカード」ワークのイメージ

チームビルディングで「強み」と「弱み」を認め合う

次に行ったのが「チームビルディングワークショップ」です。ここでは、メンバー同士がお互いの「強み」や「得意なこと」をフィードバックし合う「承認コミュニケーション」を実践します。さらに、自分の「弱み・苦手なこと」を言語化し、どのようなサポートがあれば助かるかを共有します。このワークを通じて、「苦手なことがあってもいい、お互いに補い合えばいい」というチームワークの基本原則を体感します。これは、心理的安全性の土台となる「関係の質」を直接的に高めるための、極めて重要なステップです。

「もやもや」を建設的な対話に変える

最後に、参加者が事前に共有した「もやもや」を扱います。ここで重要なのは、単なる愚痴や不満の言い合いで終わらせないことです。サイボウズでは、「問題」とは「理想」と「現実」の間に存在するギャップであると定義しています。このフレームワークを用いることで、「特定の人の意見しか出ない」という漠然とした「もやもや(現実)」は、「チーム全員が活発に意見を出し合える状態(理想)」とのギャップとして捉え直すことができます。

さらに、このワークではサイボウズが大切にする「質問責任」という考え方を紹介します。これは、「わからないことやおかしいと思ったことは、個人が責任を持って質問する」という文化です。沈黙は合意ではなく、チームの成長機会の損失であると捉え直すことで、対話は前向きで建設的な「問題解決」の議論へと変わっていくのです。

【第2回】「理想の樹」でチームの未来を可視化する

第1回で相互理解の土台を築いた後、第2回ではより実践的な対話のワークへと進みます。チームとして目指す方向性を共有し、具体的な課題解決に取り組みます。

議論している様子の写真

写真を使って想いを言語化する「理想の樹ワーク」

このセッションの中心となるのが「理想の樹ワーク」です。このワークの心理的な効果は、視覚的な刺激を用いる点にあります。参加者は、様々な写真の中からインスピレーションを感じるものを選び、それを使って「チームの未来像」を表現します。写真を活用することで、個人のより深いレベルの願望や価値観にアクセスする手助けをします。これにより、紋切り型の目標ではなく、メンバー一人ひとりの想いが込められた、より本質的で共感を呼ぶチームビジョンが生まれるのです。。

-データに基づいた対話でチームの現在地を知る- サイボウズオリジナルのチームワークサーベイ

また、この回では「Teamwork Survey」というサーベイ結果も活用しました。このサーベイでは、事前にチームメンバー全員に、チームワークの状態に対して感じていることを、選択肢とコメントで回答いただき、回答結果レポートを活用します。チームの状態を定量的なデータで可視化し、職場の状態の客観的な認識を促します。今回の研修では、「コミュニケーション」と「役割分担」の2つのテーマに絞って対話を行いました。データという共通の事実に基づいて議論することで、「なんとなくうまくいっていない」という感覚的な話から脱却し、具体的で地に足のついた改善策を見出すことが可能になります。

チームワークサーベイを活用したワークショップを通じて、研修参加者からは、「チームメンバーが考えていることが、自分の認識とは大きく違ったことが分かった。普段から対話していくことがいかに大切か痛感した。」「日頃感じていることを、一歩踏み込んで話すことができた」といった声が聞かれました。

その日の繁忙感を表す顔文字マグネット写真

【第3回】実践と振り返りで、学びを「自分ごと」にする

研修の最終回は、学びを職場で実践した経験を振り返り、定着させることに焦点を当てます。第2回と第3回の間には、参加者に「宿題」として、研修で学んだことを職場で一つでも実践してもらう期間が設けられました。

このセッションでは、その実践報告を共有し、実際にやってみて「難しかったこと」について率直に話し合います。参加者からは、以下のようなリアルな課題が共有されました。

 • ついアドバイスしてしまい、相手が自分で解決策を見出せるように促すことの難しさ
 • 日頃話さない人とのコミュニケーションの取り方がわからない
 • 部下や後輩に対する「厳しさ」と「優しさ」のバランスの取り方が難しい
 • 自分の意見は発信したが、相手の意見を引き出すことが難しい
 • プライベートな話題で若手社員との会話が盛り上がらない
 • 多忙で課員全員との1on1ミーティングの時間が確保できない
 • 完成度が求められる業務を、つい自分で処理してしまう

こうした現場の具体的な悩みに対し、私たちコンサルタントは、サイボウズ社内で実践されている具体的な手法も含め、ノウハウを提示します。例えば、「部下にアドバイスするのではなく、本人の気づきを促したい」という課題に対しては、KPT(Keep/Problem/Try)フレームワークを紹介し、本人主体で問題と次のアクションを言語化する手法をお伝えしました。また、「日頃話さない人との関係構築が難しい」という悩みには、関係性の土台を作るための意図的なザツダン(雑談)の時間を設ける重要性をお伝えしました。

研修参加者からの声

心理的安全性研修全3回を通じて、参加者からは以下のような声が聞かれました。

  • 「目指すチーム像」を研参加者同士で共有する機会があったことで、目指す方向性を共有出来た。 心理的安全性のある職場づくりに向けて、自身が行っていく行動内容を明確にすることが出来、これからの自分の行動を変えていくきっかけになると感じた。
  • 対話と感謝の気持ちを伝えることの実践とポジティブリアクション行動を実践して、明るく活き活きとした職場づくりに貢献していきたい。
  • 心理的安全な職場を形成する為には、コミュニケーション(対面による対話、雑談等)が最も重要であることを再認識することが出来た。研修中のワークや、今回学んだことを継続して行い、コミュニケーションをより良くさせ、チーム力を発揮、向上させていきたい。

研修を支える「成功循環モデル」

この研修プログラムの根底には、MITのダニエル・キム教授が提唱した「成功循環モデル」という考え方があります。

多くのチームは、成果が出ないときに「結果の質」を直接高めようと、行動管理を強化したり、プレッシャーをかけたりします。しかし、これは「Bad Cycle(悪循環)」に陥りやすく、メンバーの関係性を悪化させ、思考や行動の質を下げ、かえって成果が出なくなるという悪循環を生み出します。

サイボウズが推奨するのは、まず「関係の質」から高める「Good Cycle(好循環)」です。

「関係の質」を高める → 「思考の質」が高まる → 「行動の質」が高まる → 「結果の質」が高まる

このサイクルでは、まず互いを尊重し合える関係性を築くことで、自由な発想や当事者意識(思考の質)が生まれます。その結果、メンバーは自発的に挑戦するようになり(行動の質)、最終的に高い成果(結果の質)へと繋がるのです。今回の研修は、まさにこのサイクルの起点である「関係の質」を高めることから始めるために設計されています。

まとめ:対話の土台作りから始める、強いチームへの第一歩

出光興産徳山事業所の事例が示すように、心理的安全性を高める取り組みは、一度きりのイベントで終わるものではありません。それは、チームが継続的に成長していくための文化、つまり「対話の土台」を築くためのパワフルな第一歩です。

この研修を通じて作られたのは、メンバーが安心して本音を話し、ボトムアップで意見を出し合える場です。この土台があってこそ、その後の具体的な業務改善や目標達成に向けたアクションが、真に効果を発揮するのです。

あなたのチームは、もっと頑張っているのに、なぜか成果が上がらないと感じていませんか? 問題は行動の量ではなく、メンバー間の関係性にあるのかもしれません。多くのチームを蝕む「Bad Cycle」を断ち切り、持続的な成長を生む「Good Cycle」を回し始めるために。その最初のステップは、まず安心して話せる場を作ること、つまり対話の土台を築くことから始まるのです。

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