ユーザー事例 1
素人流 業務改善全社プロジェクト
株式会社ジーベックテクノロジー
管理部マネージャー 本堂 円 氏
最初に登壇したのは、製造現場で使われる研磨用の砥石やバリ取り用の工具を販売する株式会社ジーベックテクノロジーの本堂氏だ。ITに詳しくない本堂氏がkintoneに出会い、その可能性を信じて社内全体の業務改善を進めてきた軌跡を紹介した。同社がkintoneを導入したきっかけは、案件情報を管理する営業部向けの顧客案件管理システムだったという。「最初に構築したWebベースの仕組みは検索性に乏しく使い勝手にも問題が。そこで海外の著名なツールを選択したが、入力の導線や画面の構成に制限があり、思い通りにならなかった」と振り返る。結局現場の営業から不満が噴出し、入力が敬遠されるケースも出てきてしまったという。そこで、設計の融通が利くこと、費用面、エンジニアがいなくてもメンテナンスが可能な点を理由にkintoneを選択。
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ガートナーが示すハイプサイクルになぞらえてkintone導入の軌跡を振り返り、過度な期待のピークである導入期にはデモ機貸出用の管理アプリなどkintoneに触れる機会を増やし、幻滅期には運用してきた不満を解消するためにkintoneのカスタマイズを検討、デベロッパーにアプリの改善を打診した本堂氏。安定期に向かう啓蒙活動のステージにある現状を振り返り、「kintoneは積極的に業務改善するためのツールになった」と語る。現状はkintoneのメンテナンスができる人材を社内に増やし、より全社員と深く結びつくシステムに成長させていきたいと意欲を見せた。「ユーザーニーズをとらえ、アプリの成長や変化を見極めたうえで、使い勝手のいい形に変化させていくことが重要」だとkintone活用のコツを説く。最後に、「業務改善する機会とkintoneという最良のツールで、業務改善の輪を広げてきましょう」と聴衆に語り掛けた。
ユーザー事例 2
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マーケティング視点での顧客管理システム導入
リノベる株式会社取締役CMO 渡会 雄一 氏
続いて登壇したのは、中古マンション販売とリノベーションをワンストップで提供しているリノベる株式会社の渡会氏だ。「ITを活用して業務の効率化を実施し、いかにデータを活用して効率よくマーケットを開拓していくのかという基盤づくりが必要だった」と説明する。日常的な業務のサービスフローは、Web訪問から引き渡し、サポートまで含めておよそ6カ月という長期のプロセスとなっているが、その過程で取得できる様々な情報をマーケティングに活用しようと検討した渡会氏。そこで、情報が一気通貫で管理でき、外部パートナーとの連携も含めた柔軟な権限管理が可能な仕組みを念頭に、非エンジニアでも構築できるソリューションを使って顧客管理システム構築を検討。
最終的に同社の条件にマッチしたのがkintoneだったという。「自社開発だとおよそ7カ月の期間がかかる試算でしたが、その間に業務プロセスが変わる可能性もある。そこですぐに実装できる環境としてkintoneを選択しました」と渡会氏は振り返る。実際の仕組みでは、データの入力精度を高めるべく入力用アプリと閲覧&分析アプリを分け、工事請負契約書など必須業務をアプリに組み込むことでkintoneが業務基盤のベースになるよう工夫。また、Excelに慣れている設計部門のために見慣れたインターフェースをkintoneで作り込むことや、kintoneの数字を元に議論する体制を作るために、kintoneの情報を元にダッシュボードを作るなど工夫を凝らした渡会氏。結果として、成約したユーザー情報をもとに拡張配信が可能になり、kintoneのアラート機能を使うことで顧客と最適なコミュニケーションを図ることもできるようになったという。「全員が同じ数字をもとに議論可能になり、入力工数削減で本業に注力できる。また、顧客データを武器にマーケティングに活用できるようになったことが大きい」と渡会氏は語った。
ユーザー事例 3
資生堂がkintoneを使ってみたら
株式会社資生堂 技術企画部 佐藤 麻子 氏
続いてユーザー企業として登場した株式会社資生堂の佐藤氏は、ヒーリングミュージックを流しながらプレゼンに臨むというkintone hiveでは新たな試みのなか、同社の新入社員向け研修での取り組み事例を紹介した。佐藤氏は技術系新入社員に向けての研修を手掛けており、ものづくりの流れを理解させるべく、体験型の研修や新入社員の声を聴くというコンセプトで研修を実施しているが、「実は“寝かせない”というコンセプトが一番大きい」と語り、会場の笑いを誘った。研修では、日報や交通費申請書、アンケートなどを研修期間中に提出するが、以前は20名ほどの小規模だったため紙による運用が中心だったという。しかし、ここ数年で80名あまりにまで新入社員が増えたものの、担当者は佐藤氏1人のまま。
「コミュニケーションをどう図っていくのか、紙資料の運用や提出物の共有など課題が明らかになってきたのです」。そこで、これらの課題を解決するためにkintoneの活用を決意した佐藤氏。「セキュリティはもちろん、事務局および新入社員が取り組みやすいこと、そしてコストの面も考慮したうえでkintoneが最適だと判断しました」。事前準備としては、アプリが必要かどうか業務を見定め、アプリで何の情報を得るのか、どのデータをどう活用するのかを明確化し、スマホの画面イメージを作成したうえでアプリ作成に入ったという。実際には、研修内容やスケジュールなど常に表示しておきたい情報を「お知らせ」に、日報の活用方法といった埋もれさせたくない情報や個別のやり取りにはスレッドをうまく活用。日報や交通費精算書、アンケートなど集計したい情報をアクセスしやすい場所に配置し、スマホ画面からシンプルに入力できるように工夫したという。運用にあたっては「ユーザーのことを一番に考えることが大事。新入社員だけでなく、配属先の上司や我々運営側など、どのシーンで誰が使うのかを意識することが重要です」と語った。
ユーザー事例 4
パートナーコラボレーションを支えるASP
株式会社リクルートライフスタイル
ネットビジネス本部データマネジメントG 奥山 晃次 氏
株式会社サインウェーブ 鈴木 佑介 氏
事例の最後として、株式会社リクルートライフスタイルの奥山氏とkintone開発を手掛けた株式会社サインウェーブの鈴木氏が登壇した。今回紹介したのは、同社が提供するモバイルPOSのアプリケーションをパートナー経由で販売する際にkintoneを活用した事例だ。具体的には、店頭での接客を通じて得られた情報をkintoneに入力し、情報共有しながらPDCAを回して受注確度の高い接客パターンを見つけ出す目的で利用している。
その実現に向けて行ったのが、脱Excelによってパートナーとの間にコラボDBを構築すること、データに基づいてPDCAを実践すること、権限設定などを駆使することで入力の負荷を軽減すること、そして要件定義からしっかりエンジニアが関わっていくことだった。「これらを実現することで成約率は約4倍に向上し、リードタイムの短縮や発注業務の効率化、受注処理効率を大きく改善することに成功した」と奥山氏は説明する。実際には、受注・接客・問合せについてのコラボDBをkintoneによって構築し、修正に工数が発生し販売側のモチベーション低下を招いていたExcelからの脱却に成功した。また、フォームクリエイターを使いながら詳細な情報を顧客レコード単位で販売パートナーに入力してもらうことに。
「最初は入力が進まなかったが、商談情報をきちんと入力する店舗が2倍、3倍と成約率を伸ばしていくという成功体験が共有できたことが大きい」と奥山氏。なお、入力負荷軽減のためには「品質の高いデータの仕組みを作ることにリソース投資を惜しまないこと」だと鈴木氏は力説する。ポイントとしては、「直感的なユーザーインターフェースを意識し、アプリの権限設定で組織ごとに最小限の機能を開放、コメント機能によってパートナーとのコミュニケーションを円滑にすること」だと語る。他にも、業務の要件定義からエンジニアである鈴木氏が伴走することで、齟齬を起こすことなくユーザーフレンドリーなUIが実現できた点も大きいと振り返る。最後に奥山氏は、「ビジネスのゴールに向けて強力にサポートしてくれるkintoneを再度認識するところから設計を始めたのが今回の成功の一番のキーワード」と熱く語った。
kintone hack
~ここまでできるkintone~ カスタマイズ事例・プラグイン紹介 秘密の自社事例も公開!
M-SOLUTIONS株式会社 取締役 CSO 植草 学 氏
まずはkintone hack初代チャンピオンの植草氏が登壇し、クラウドサービス「Smart at」をはじめ、IoTアプリ開発やモバイル・Webアプリ開発を手掛けている同社の最新のkintone事例を披露した。「最近は一緒に構築する“参加型システム構築”が増えている」と冒頭にSI案件トレンドに言及したうえで、自分たちで開発できるか不安を抱える顧客に対して、自分たちで構築できるよう最低限のカスタマイズを施し、プラグインを積極的に活用した共創SI事例を紹介。また帳票ソリューションを組み合わせた事例では、Excelで運用してきた案件管理や見積書作成などをkintoneで実装するなかで、「単票での出力や帳票の複雑さに応じてPDF帳票出力のオススメサービスが異なる」と力説。さらに、SIerとしてkintoneをどう活用しているのかについて、問合せ管理や販売管理、自社サービス管理など、自社のkintone活用事例を簡単に披露。「自社で開発できるものの、無理にカスタマイズを入れずに使うのがポイント」というコツとともに、メニュー切替プラグインやルックアップ自動取得プラグイン、アクセスログ出力プラグインを駆け足で紹介。5分間という限られた時間の中で、約50枚ものスライドを軽快なテンポでプレゼンした植草氏は最後に、数値・日付フィールドを追加対応した「検索拡張プラグイン」を期間限定で無料配布し、恒例の“hiveで配布(ハイブでハイフ)”する一幕に会場から拍手が沸き上がった。
kintoneで実践する ちょっと近未来なインターフェース
株式会社ジョイゾー 山下 竜 氏
続いての登壇は、株式会社ジョイゾーの山下氏だ。kintoneに対する良質なインプット、アウトプットを実現するべく、毎回新たなインターフェースの可能性を提示している山下氏だが、今回はそのインターフェースを空間に広げる試みを実演した。具体的にはスマートフォンを空間にかざすことでkintoneの情報がタグとして表示されるというデモを実演、「kintoneのレコード情報を活用した、いわゆるAR(拡張現実)」と語る。営業などが顧客を訪問する際にカメラから顧客情報を表示するアプリや、店舗・施設ごとに抱えている懸案事項を表示するアプリなどを提案。
さらに、タクシー情報を実際の画像に表示するUberのようなサービス事業モデルや、地域ごとに寄せられた要望を画面上に表示する地域マッチングなど新しい形のAR活用をkintoneで実践できるのではないかと示唆した。
デモは、kintone上から仕事に関する依頼情報を入力すると、位置情報とともに依頼情報がkintoneレコードとして登録され、仕事を探す別の人間がスマホを空間にかざすことで仕事依頼の情報が表示されるというものだ。スマホでのデモがネットワークの影響でスムーズに行われなかったものの「誰か直して、デモに失敗している」と依頼情報を登録、トラブル状況をそのままデモに応用するなど、臨機応変なプレゼンテーションで会場を沸かせていた。
hackで働き方改革 kintone チャットボット連携
株式会社ジョイゾー 代表取締役社長 四宮 靖隆 氏
Mr.kintoneこと株式会社ジョイゾーの四宮氏が登壇し、働き方改革をテーマにチャットボットと呼ばれるソリューションとの連携について紹介した。kintoneで業務システムを作るうえで重要な3つの要素といわれる「データベース」「プロセス」「コミュニケーション」の中でも、コミュニケーションにフォーカスした話題で、ビジネスメッセンジャーツール「direct」によるフロー型のコミュニケーションと、kintoneによるデータを蓄積していくストック型のコミュニケーションを連携させることで、現場の働き方改革を行う実例を紹介。「directが持っているボットと呼ばれる機能を使うことで、新しい入力インターフェースが実装できる」と四宮氏。具体的な活用として、写真報告ボットや日報ボット、GPS勤怠ボットなどを紹介し、ボットと会話しながら必要な情報をkintoneに登録するデモを実施した。同社で開発した作業報告ボットを例に「質問に対して答えていったり写真を添付したりするだけで、ほとんど入力することなくあっという間に作業報告が登録できる。チャットを使うことでITリテラシーの高くない人でも簡単に登録できる」と力説。最後に、四宮氏が行うkintone hack恒例となった新プラグイン公開で「テーブル編集ビュープラグイン」を披露してプレゼンを締めくくった。
株式会社エイチツーオー・スペース 谷口 允 氏
kintone hack後半戦の最初に登壇したのは、kintone hack初登場の株式会社エイチツーオー・スペースの谷口氏。バーコードを活用した蔵書管理アプリを紹介した。書籍を数多く持つ企業ではその管理に課題を抱えているところも多く、今回紹介する蔵書管理アプリが活用できると力説する谷口氏。スペース上に検索ボタンを設置し、書籍名やISBNコードを入力することで、Google提供のBooksAPIから書籍情報がkintoneに入ってくるような仕組みで、書影を含めた書籍情報が簡単に登録できるようになっている。また、HTMLとCSS、JavaScriptを活用したオリジナル画面を披露し、「写っている本は自分の書いたものばかりを並べています」と会場の笑いを誘う場面も。数多く書籍を所有している場合は登録するだけでもひと苦労なので、USB接続可能なバーコードスキャナでISBNコードを読み取り、検索ボタンを押すだけで登録できる仕掛けも披露。参加証に印字されたバーコードを読み取ってイベント管理に活用する例や、バーコードにて出退勤データをkintoneに取り込む例、商品用のバーコードで在庫管理する例など、バーコードとkintoneの組み合わせでいろいろなことができることをアピールした。
Let’s enjoy kintone together!
ラジカルブリッジ 代表 斎藤 栄 氏
“クラウドおじさん”の愛称を持つkintoneエバンジェリストであり、「kintone Café」の創始者でもあるラジカルブリッジの斎藤氏が登場した。複業の別会社ではkintoneをベースとした個人教室向け顧客管理アプリ「テトコ」の運営も手がけている斎藤氏。「kintone命の私だけでなく皆さんがkintoneを楽しめているのは、“便利!速い!安い!”仕組みであり、ブラックボックスだったシステム開発を自らの手に取り戻せるから」だとその魅力を力説する。その感動をもとに「kintone Café」をスタートさせ、今では全国の支部で計146回もの開催実績を誇るまでの大きな輪に広がっているという。そして斎藤氏が手掛けたカスタマイズ案件を紹介しながら、「Googleカレンダーみたいの、でけへんの?」という要望を受けて開発した「カレンダーPlus」というプラグインを披露。kintone標準画面と比べ、22秒に対してわずか8秒という短時間でデータ登録でき、ステップ数も大幅に削減できるなどその優位性を紹介した。また、「Googleカレンダーと連携でけへんの?」という要望に対しても、新たにkintoneがWebhookというREST APIに対応したことで、予定が入った時点でGoogleカレンダーに自動登録できる機能をユーザー自身が簡単に設定できるようになると斎藤氏。最後に期間限定の参加者特典も紹介したうえで、「素晴らしいkintoneライフを!」と訴えた。
kintoneで教育をhack
アールスリーインスティテュート 金春 利幸 氏
最後に、2016年kintone hackチャンピオンシップで見事チャンピオンに輝いたアールスリーインスティテュートの金春氏が登壇。カスタマイズやプラグインなど技術に関する話題ではなく、立命館大学と共同で取り組んでいる教育に関する事例について披露した。経営を学ぶ文系の学生に対してシステムがどういうものなのか体験してもらいながら、業務とシステムが両輪になっていることを理解してもらう試みを紹介。同時に、理工系の学生ではない人にシステムを作ってもらうとどうなるのかも研究対象として見ていると金春氏。実際の授業では、ある業務フローを学生に渡して、いきなりkintoneでアプリを作成してもらったという。すると、グループによって全く異なる方法で業務アプリが出来上がるという結果に。このことから、同じ業務でも作る人が異なると驚くほど違うアプリができるだけでなく、文系の学生であっても少しの学びでアプリが作れること、そして仮想的な課題では自分ごととしてアプリが作りにくいことがわかったため、本年度はNPO法人の方にご協力をいただき実際に業務で使われるアプリを作成する形で進めていくことにしたと金春氏。
最後に「会社で同じようにやってみるとものすごく面白いことが起きます。ぜひ試して欲しい」と語りかけた。
懇親会風景
kintone hive終了後には、株式会社ジーベックテクノロジーの本堂氏が乾杯のあいさつを務め、懇親会がスタート。「ノー残業、楽勝!予算達成しなくていいならね。」といった、働く人の共感を呼ぶ強烈なキャッチコピーが話題の交通広告ポスターが、自分の会社に貼り出してもらうことを条件に会場で配布された。直接言えない本音をポスターでアピールしたい人が押し寄せ、多くの来場者がポスターを持ち帰った。
また、中締めとして大阪から応援にやってきた、あっとクリエーション株式会社 黒木 紀男氏と、2016年 kintone AWARD のファイナリストに選ばれた株式会社神戸デジタル・ラボ 武富 佳菜氏があいさつを行い、6月16日に開催されるkintone hive osaka の成功を祈念して一本締めで締めくくった。最後まで登壇者を中心に会話が弾んでいる姿があちこちに見受けられ、会場は大いに盛り上がっていた。
kintone hive tokyo にご来場いただいた皆様
ありがとうございました!