西日本鉄道株式会社(以下、西鉄)は福岡県を中心に鉄道やバス事業を展開している。また、西鉄グループとしては国際物流事業やホテル事業など幅広く事業展開を行っている。
西鉄にはDXを推進する部門として「DX・ICT推進部」を置いている。
西鉄もDXには積極的に取り組んでおり、日々、ITサービスの活用可能性を模索しています。そんな中、さらなる生産性向上のために、ノーコードツールの導入を検討し始めました。(DX・ICT推進部:川崎氏)
西鉄がノーコードツールに求めた条件は3つ。
1つ目は「内製化」、つまり現場の人間でも気軽に業務に利用できるか、というポイント。
2つ目に「コスト」、導入障壁になる費用をいかに抑えられるかも重要となる。
3つ目に「機能」、現場の多様な課題を柔軟に解決できることも外せないところ。
この3点で製品選定を行った結果、たどり着いたのが「キントーン」だった。
キントーン導入にあたっては、4つのステップで進めていった。
ステップ1は「ルール策定」。西鉄は4,600人の従業員を抱える企業。ここに、現場で自由にシステム開発・運用ができるキントーンを導入すると「開発の属人化」や「セキュリティ設定のミス」などが起きてしまう懸念がある。運用開始後に厳格なルールを策定するよりも、西鉄では最初に厳格なルール作りを行い、運用に合わせてルールを緩和する方針を取った。
特徴的なルールは「開発スペース」と「本番スペース」の切り分けだ。
「開発スペース」では自由にアプリを作成でき、本番利用したい場合にはDX・ICT推進部に申請を行い「本番スペース」への移行を行う。
このようにすることで、各部の運用状況の把握ができるだけでなく、管理統制も可能になります。他にもセキュリティ規則やアプリの命名ルールなども利用規則に盛り込んでいます。(DX・ICT推進部:濱邊氏)
ステップ2は「教育コンテンツ」の作成だ。
西鉄の全社ポータルサイトには「キントーンポータル」があり、ルールや研修の開催案内だけでなく、研修動画をアップロードし、いつでも社員が学習できるようにしている。
ステップ3は「本格導入」。
西鉄はあくまでも「現場の内製化」を重視し、開発から運用まで一貫して事業部門が主担当を担い、DX・ICT推進部は事業部門をサポートする役割を担う。
ステップ4は「定着フォロー」として、DX・ICT推進部による業務改善相談会やキントーンの操作方法に関する研修を実施している。
内製化にこだわる西鉄では、バス部門である「自動車事業本部」でも現場の担当者でキントーンを活用している。
バス事業の運営にあたっては、各種法令に則って必要な保存年限が定められた資料が多くあり、日々バスの営業所は紙であふれていました。加えて、紙で様々なことを管理するのが当たり前の職場で、ペーパーレス化/業務効率化などはあまり検討されていませんでした。(自動車事業本部:下條氏)
そんな中、下條氏は2020年に部門内で立ち上がった業務改善プロジェクトに参画することになり、部内の業務効率化に着手する。その際、DX・ICT推進部よりノーコードツール導入の社内実証に協力してもらえないか、という打診があり、下條氏は快諾。
まずは、営業所から本社に手書きの上FAXで送られていた報告書をキントーン化することに着手した。営業所側には「フォームブリッジ」(※株式会社トヨクモが提供するキントーン連携サービス)を利用し、Webフォームからの報告をしてもらう運用にした。この際、紙との並行期間を数か月作り、利用者からのフィードバックを受けてアプリをブラッシュアップする期間とした。
その結果、様々な意見が集まり「自動入力項目を増やす」や「報告後、関係者への自動メール配信」、「紙での出力対応」などを行った。
また、リリースにあたってはITツールが苦手な現場の人に寄り添った丁寧すぎるくらい丁寧なマニュアルも用意。リリース前に労力を割くことで、導入後の混乱や質問を減らす効果を期待した。
これを皮切りに下條氏は紙やFAX運用の業務を次々にキントーン化。「コロナ休務者リストアプリ」では営業所ごとの勤務者数を把握できるようにし、「配転希望調査」ではバス乗務員の異動希望を営業所ごとにクロス集計して一目で分かるようにした。
結果として、自動車事業本部では年間2,000時間超の業務時間削減に成功。
2022年度は全社で6,000時間弱の業務時間削減を達成した。
なお、DX・ICT推進部では、各部がどのようなアプリを作ってどのくらい業務改善効果があるのかを見える化して、毎年表彰式も開催している。
西鉄はキントーンを活用した真のDXを実現するために3点注意をしている。
1つ目が「手段と目的を混同しない」こと。キントーンを使うことが目的となってしまっては本末転倒。時には、キントーンを使わないことがベターなケースもあるので、その見極めができるユーザー教育を意識している。
2つ目に「サービス開発はUX第一」。キントーン化することで一部の人だけが楽になる運用だと意味がない。このため業務に関連する人やプロセスをすべて洗い出して、全体最適化を優先している。
3つ目に「浮いたリソースを有効に活用する」こと。浮いた時間やコストは新たな付加価値の創造に充てていく。
西鉄は、多様な事業ドメインでお客様に選び続けてもらえるようなサービスを提供するためにITツールやデータを活用した事業改革を続けていく。キントーンはそのような改革を支えるサービスとして活用し、情報システム部門と事業部門が一体となって、今後も成長を続けていく。