沖縄県糸満市にある「琉球ガラス村」を運営するRGC株式会社(以下RGC)。同社はガラス製品の製造、卸、販売まで一貫して行なっており、現在約70名のスタッフが働いている。
その中には現代の名工3名、工芸士12名と専門資格を有するスタッフも多く在籍しており、質の高いガラス製品は観光客だけでなく地元沖縄県民からも愛されている。
RGCにキントーンが導入されることになったのは2019年。消費税率変更により、10年以上使っていたPOSシステムの入れ替えが急務となった事がきっかけだった。導入担当の當眞氏は「スマレジ」とキントーンを連携させる方法で導入を推進していたが、合わせて基幹システムに登録されているデータがほぼ機能していない事を危惧し、その活用を模索した。
商品情報や顧客情報があまり管理されておらず、昨年はどの商品が何個売れたのか、水色のグラスは全体の売り上げの何割を占めているのか、といった情報が把握できない中で、すべて現場の勘や感覚に頼った経営をしていました。顧客の県内・県外比率も分からず、傾向の分析や数字に基づいた戦略を立てる、といった事が難しい状況でした。(當眞氏)
以前は観光団体客を乗せたバスが琉球ガラス村に訪れ、沖縄土産として琉球ガラスをカゴいっぱいに買っていくという光景が当たり前だった。しかし、近年はレンタカーを利用する個人旅行客が増え、スマホで自ら情報を調べて沖縄に訪れる観光客が増えた。時代とともに顧客の性質も変わり、営業スタイルも変わっていく。そのためにはデータをもとにした分析は欠かせないと當眞氏は考え、キントーンでの売上分析を社内に提案した。
キントーン導入に際し、當眞氏はキントーンに仮データを入れて社内のスタッフにデモを行うことで役員たちからは理解を得ることに成功。しかし、元々の基幹システムに慣れている現場スタッフからは難色も・・・
データとしての精度を上げるためには入力必須の項目も増えますし、日々の業務に追われる現場スタッフからすれば『今までのやり方で上手く行っていたんだから、それでいいじゃん』という気持ちが強くなるのも分かります。そこで、データの精度は保ちつつ現場の負担を減らせるような仕組みを考えました。
最初に取り組んだのは、商品の表記ゆれ問題への対応だ。例えば、沖縄県の名産である「シークヮーサー」は「シークワーサー」「シイクワシャー」など表記が異なるケースが多く、これを各々の表記方法でデータベースに登録すると検索にヒットしなくなってしまう。これと同様に、RGCで取り扱う商品名も入力するスタッフによって表記ゆれが発生し、データベースとして正しく機能しないという問題が発生していた。そこで當眞氏は各商品に番号を付与し、データベース上の表記を統一することにした。しかし、キントーンへの登録作業にはやや手間が掛かり、現場スタッフからすれば面倒な作業であることには変わらない。
そこで、當眞氏はバーコードリーダーを使った登録方法を提案。商品番号のバーコードをスキャンすると簡単にレコードを登録できるようにカスタマイズを実施。これが大成功で、現場スタッフにすんなりと受け入れられた。
このバーコードリーダーを使った登録方法が成功した理由のひとつに「読み取るとピッと音が出ること」が挙げられると當眞氏は語る。
「音が鳴ると感覚的に『登録できた』という事が分かるし、マウス操作でいくつもボタンをクリックするよりも楽しく登録ができると思います。何気ない事のように思えますが、こうした小さな工夫が功を奏しました。」
當眞氏の尽力によりRGC社内でも徐々にキントーンが浸透し、在庫や売上、売れ筋品をデータベース上で正しく管理する動きが出来つつある。
以前は業務の属人化も目立っており、広大な倉庫内のどこに目的の商品があるのかは特定のスタッフしか分からない、その人が休みだと調べられないという状況が頻繁に起きていた。
しかし、現在はデータベース内の情報を頼りに各々が必要な情報を必要な時に引き出せるようになった。
そして2020年、突如全世界を襲った新型コロナウイルスの脅威。沖縄を訪れる旅行客は激減し、RGCもその余波を受けた。
しかし、そんな中でもキントーンを導入していたことで縮小した部署でも以前と同じような仕事ができており、更にはキントーンで分析した売れ筋の琉球ガラスの模様を「かりゆし」に応用し、新たなビジネスモデルを創出している。
客層の変化により営業スタイルも大きく変わりました。今は待っていてもお客さんが来ない状況なので、データをもとにロジカルに戦略を立てて行動することが求められています。これは営業スタッフのスキルも磨かれるということです。今社内の体制を整えておけば、いずれ旅行客が戻った際に必ず売上が上がります。我慢の時期ではありますが、そういった期待を持ってこの苦境を乗り越えていきたいと思います。
※2023年現在は、定期的にイベントやワークショップを行い地元の人にも愛されながら営業をされております。