サイボウズが、2022年5月より開始した「キントーン1年間無料キャンペーン」。
多くの自治体に参加いただき、それぞれkintoneを利用した業務改善の成果を上げています。
本日は、「キャンペーン中間報告会_参加自治体の活用術を聞いてみよう!」と題して、2023年2月20日に行われたイベントにて、参加自治体の下妻市様、旭川市様より、それぞれデジタル推進室長 小林正幸様、総務部行政改革課 水沢悠様をお呼びし、キャンペーンの成果をお話しいただきましたので、その様子をレポートにてお届けします。
まずは両自治体でのkintoneの活用状況について、プレゼンテーションを実施いただきました。
下妻市小林様からの発表内容です。
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下妻市では、世の中でICT化が進む中、そのスピードに追い付いていないという危機感がありました。
アナログ的な業務が目立ち、特に相談業務・プロセス業務に関してExcelでの管理から脱却できないといった課題意識がありました。
そういった背景から、もともと内製化ツールとしてkintoneに白羽の矢を立てていた中、折よく「キントーン1年間無料キャンペーン」に応募したところ、対象自治体となりました。
kintone導入後はまず、運用ルールの整備を行いました。
全ての課に専用の非公開スペースを作成するとともに、必要に応じて、アクセス権設定を支援する等、利用者の心理的ハードルを下げ、「まずは使ってもらうこと」を第一に考えました。
また、全庁展開を進めるにあたっての大きな取り組みとして、独自の研修会の開催があります。
キャンペーン参加のゴールを「kintoneが業務改善アプリとして庁内に定着すること」と捉え、そのための近道として、市独自の研修会を実施し、操作を職員に覚えてもらうこととしました。
研修会のプログラムは、最初に概要を説明した後、Youtubeを視聴し、フィールドのパーツを理解します。
その後、休憩をはさみ、実際にアプリ作成、レコード登録、一覧のカスタマイズなどを行います。
2時間弱の研修ですが、終了時には全員が普通に使えるようになります。
下妻市ではこういった研修会を25回以上開催し、2023年1月末時点で全庁職員の6割に当たる200名以上の職員がこの研修を受講しています。
こういった取り組みの成果もあり、下妻市では様々な業務改善成果が生まれています。
業務改善アプリの一例として、保健センターにおける発達相談アプリがあります。
従来紙で行っていたアンケート業務をスマートフォンで行える形式に変更したことで、情報が一元化され、集計作業の手間が大幅に削減されました。
このシステムは保健センターで運用されていますが、部門ごとに積極的にこういったアプリが利用され、アイディアベースで改善が進むことが、kintoneの魅力と考えております。
他には、選挙における投票速報アプリがあります。
従来、各投票所の担当者がメールで報告を行っていた業務ですが、報告内容のExcelへの転記作業の手間と、入力ミス等のヒューマンエラーの発生が課題でした。
kintoneでアプリを作成し、入力フォームより報告をする形式に変更することにより、上記課題の解決を図ることができ、現場の担当者からも非常に好評でした。
このように、研修会を重ねるにつれ、kintoneでアプリ作成を行う職員が増加しております。
興味深いのが、若手の職員が積極的に利用することで、中堅以上の職員も取り残されてはいけないという意識が芽生えている点です。
これは予想しなかったことですが、従来のやり方を変えたいという若い職員のエネルギーが、市役所全体の雰囲気を少しずつ変えているのだと感じています。
また、人事担当も、アンケートや各種届出をkintoneで行うようになったことで、kintoneが全庁的に定着し始めており、当初はスモールスタートで一定数のライセンスの導入を考えておりましたが、キャンペーン終了後も現状と同様に全職員にライセンスを配布する予定です。
今後はこのいい流れを絶やさぬよう、引き続き研修会を開催するとともに、BPRを積極的に進める予定です。
その中で、kintoneを業務改善ツールの中心と位置づけ、引き続きDXの推進、市民サービスの向上を図っていきたいと考えています。
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続いて、旭川市水沢様にプレゼンテーションを実施いただきました。
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旭川市では、地域として顕著な人口減少・少子高齢化に伴う職員数の減少(いわゆる2040年問題)に、大きな課題意識を持っていました。
特に自治体の仕事は、人口が減っても減りにくい特性があるため、「業務効率化」と「サービスの向上」を両立するための手段としてのDXは必須と考えています。
そのような背景の中、今津市長は「日本一のデジタル都市に挑戦しよう!」と職員に強くメッセージを発信しています。
そのために必要な要素は様々ですが、「組織風土の変革」が特に重要と考えました。
その上で、多くの職員が自ら考え、自ら取り組み、そして自ら成長するための手段として、ノーコードツールの活用を進めています。
旭川市は様々なノーコードツールを活用しています。業務の課題を分析し、適切なツールを選択することが大切です。
その中でも、kintoneは紙とデータの混在が多い、登場人物が多い、といった複雑な業務の改善に力を発揮できると考えています。
kintoneの導入にあたり、まずはスピードを意識しました。積極性の高い職員はアカウントを配布すればすぐに動くと考え、とにかく早く環境を提供しました。
その後じわじわとkintone仲間が増えています。並行して、要領・マニュアルの策定、原課へのアプリケーション導入支援などを行っています。
導入の上で工夫した点をいくつかお話します。
まず、Web分離仮想ブラウザの活用が利用促進の後押しとなりました。
旭川市では、職員は基本的にLGWANの端末を利用するため、インターネットに直接接続できませんが、仮想ブラウザを利用することで、ローカルのコンテナでブラウザを実行しています。
LGWANのPCでkintoneのようなクラウドシステムが利用できますし、ダウンロードしたファイルは自動的に無害化してローカルに保存されますので、ネットワーク分離を感じさせない使用感を実現できています。
次にUI(ユーザインタフェース)の部分です。kintoneは何でもできる反面、目に入る情報が多いため、ハードルを下げるためあえて情報を絞っています。
動き方で迷わないよう、ホテルのフロントをイメージしてポータルを作成しています。共有のスペースや、自分たちだけの落ち着ける個室を配置しています。
また、アプリケーションの運用は、要領やマニュアルで細かくルール化しています。
アプリの運用に際しては、「お試し⇒プレ運用⇒本運用」とステップを踏んで、本運用時には権限設定等を十分確認するルールとしています。
また、庁内にコミュニティを形成しています。kintoneのスレッドやチャットを利用し、気軽に仲間を作ることができます。
こういった参加者同士で問題解決ができる土壌づくりにも力を入れています。
実際に作成されたアプリの一例として、「就学相談アプリ」があります。
教育委員会・相談員・児童の親、学校が関わる業務で、従来は紙のやり取りが中心で業務の改善が望まれておりました。
kintoneでアプリ化することで、業務時間が4割減となることを見込んでいます。
アプリケーションは、もともとシステムスキルを持ち合わせていなかった担当職員が作成しています。
キャンペーン内の教育コンテンツでスキルを身に着け、業務の合間にたった2か月でアプリを作成、今も複数のプラグインを用いて継続的にアップデートしています。
kintoneを導入したことで、担当者がアプリケーションを作成できるという特性を生かし、組織風土の変革につながる変化を生むことができています。
現場主導で業務改善を進める推進力となり、その経験を循環させる歯車になっています。
そういった業務改善の輪が広がり、市役所全体の風土が変わっていくことがDX推進の鍵であると考えております。
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プレゼンテーション後は参加者から質問を募り、それぞれお答えいただきました。
質疑応答の内容は以下のとおりです。
Q.下妻市様の発表内容について、研修会を定期的に実施しているとのことだが、実施する際に対象課や対象職員などは指定しているのか?
【下妻市 小林様】
毎回、グループウェアで広く募集し、対象は制限していない。課長の隣で新人が受けている、みたいなことも多々ある。
Q.旭川市様の就学相談アプリについて、情報を学校職員や相談員とも共有できるよう作成しているとのことだが、kintoneに蓄積したデータをどのように外部に公開しているか?
【旭川市 水沢様】
プラグインツール「kviewer」と連携し、外部公開することで、学校職員や相談員も参照できるよう作成している
Q.自治体三層分離のどの領域でkintoneを利用しているか?また、個人情報の取り扱いなど、クラウドツールを利用する際のセキュリティに関する考え方は?
【下妻市 小林様】
当初、LGWANでの利用を前提にして参加していたが、キャンペーンではインターネット版を利用することが前提だったので、現在もインターネットで利用している。
市のセキュリティポリシーや国のガイドラインを照らし合わせた結果、kintoneがIPアドレス制限ができること、独自URLが生成されること、基盤がISMAPを取得していること、
といった条件を満たしているため、機密性2以上の情報について取り扱いが可能と判断している。
【旭川市 水沢様】
A.旭川市もインターネットでの利用が前提。2022/3改正の国のガイドラインをもとに、市のセキュリティポリシーを改正した。
機密性2以上の情報を扱うこともあるが、アプリの本運用フェーズで、行政改革課や情報システム部門でアプリの構成や権限設定、取り扱う情報などをチェックした上で運用するルールとしている。
Q.kintoneの運用を広げていく上で苦労したポイントは?
【下妻市 小林様】
キャンペーンの全体スケジュールがタイトで駆け足気味だった。
また、キャンペーン開始当初に運用プロセスのガイドラインを配布されたが、ボリュームがあったこと、また、組織及びアカウントの利用設定を自分達で実施したのも大変だった。ただし、グループウェアはサイボウズ社のGaroonを利用していたため、マスタデータの構造に統一性があり、登録情報が流用できたのはよかった。
キャンペーン内のセミナーについて、回を重ねるにつれ、紹介されるプラグインが多く、追いつくのが大変だった。
【旭川市 水沢様】
kintoneはいろいろなことができるので一言で言い表すのが難しく、敷居が高く感じて、一歩目で躓いてしまう方がいるように感じる。
その点キャンペーン内のセミナーで丁寧に教えていただいたので、自分自身の習得の上では非常に助かった。
しかし、管理職にどんなことができるのかを説明する際には苦労した。
Q.キャンペーン中のセミナーコンテンツについて、参加者は各自治体何人くらいだったか?また、管理部門と原課の参加者が足並みを揃えて推進できたか?
【下妻市 小林様】
参加者は原則二名とされていたが、自分を含め興味のある職員数名は併せて参加していた。担当者は二人三脚で推進できた。
【旭川市 水沢様】
セミナーの全体スケジュールを早めに示していただいた他、各回二つの日程から選択できたので、相談しつつ問題なく推進できた。
Q,kintoneのウィークポイントを上げるとするとどこか?
【下妻市 小林様】
テレビのCMなどで、「何でもできる」と思いがちだが、プラグインが無いとできない部分も多いと感じる。その上で、プラグインをどこまで導入する点については費用対効果とトレードオフになる。
【旭川市 水沢様】
今までMicrosoft Accessを利用していた業務をkintoneに置き換えた際、原課のイメージ通りの動きに一歩届かないケースがある。
こうした点を解消するためにカスタマインによるカスタマイズで使用感を高めることが多い。
Q.kintone導入に際して、財政部門を説得するコツは?
【下妻市 小林様】
キャンペーン開始の時点であらかじめ各方面にキャンペーンの意図等を説明した。
市長の公約としてもDX推進を掲げており、それにうまく乗れたと思う。
【旭川市 水沢様】
アプリを一つ完成させて、そのアプリに関して、費用対効果としてある程度インパクトが見せられるような資料を作成して説明をした。
そこからkintoneの可能性をアピールするため、さらにこれだけのアプリを準備中であり、こうした業務改善が広がっていくといった見せ方をした。
また、プラグインや拡張サービスについては、個別のものでなく、kintoneとこうした機能が揃うことでこれだけの効果を発揮できるものとして説明をした。
キャンペーン期間は続きますが、サイボウズとしても、各自治体においてさらなる成果を生むことを願っております。今回のレポートが、kintoneの活用ヒントとなれば幸いです。
サイボウズでは2023年度も「キントーン1年間無料キャンペーン」を開催いたします。興味のある自治体の皆様、ぜひ奮ってご応募ください。
【キントーン1年間無料キャンペーン 特設ページ】